医療法人解散メリット
個人成り解散のメリット
解散をネガティブなイメージではなく、維持コストを大きく圧縮してお金を残すために、
法人から個人に戦略的に戻すということが有効です。
医療法人を設立することで、様々なメリットを得られますが、
医療法人の設立にもデメリットがあったわけです。
個人成り解散のメリットには、医療法人設立のデメリットがなくなるというものをはじめ、様々なものがあります。
売り上げが減少してきた、後継者がいないという場合であっても、計画的に医療法人を解散、個人成りをすることで、様々なメリットを享受することができます。
解散によって社会保険の脱退ができるようになる
医療法人で売上が多い時は節税効果があるが、売上が減ってきた場合には、法人の場合、従業員の社会保険や年金がすごく負担になってきます。
個人クリニックの場合、従業員が5人以下であれば社会保険への加入が任意となります。
これに対して、医療法人では従業員の社会保険への加入が原則となります。
従業員が5人以下のクリニックの場合、個人成りに伴って社会保険の脱退が可能となります。
社会保険料の負担は、年々値上がりしています。
なんと平成21年から平成31年の10年間で約20%も上昇しています。
クリニックによっては、所得税や住民税よりも社会保険料の方が負担ということもあります。
- 常勤の従業員が1名か2名くらいに構成員が減少してきた
- 院長、あとは配偶者の方と非常勤の従業員が1名ないしは2名である
- 今後は新たなスタッフを採用するほど医院を大きくするようなことは考えていない
このような医療法人様はあえて社会保険への加入を継続するほどのメリットがないと考えられ、非常に大きいメリットが得られます。
概算経費の特例が使用しやすい
⇒売上が減ってきた場合、概算経費の特例が使用できるようになります。
概算経費とは、領収書がなくても一定額の経費を法律で認めてくれる、医師優遇税制です。
実際にその額の経費が発生していなくても経費として計上することができます。
例えば、年間4,000万円の保険収入があって、実際には1,000万円しか経費が掛かっていなくても、算定された3,000万円を経費として申告すればよいので、非常に節税効果が高いわけです。
しかし、条件があり、
・年間保険診療報酬が5,000万円以下のクリニックである
・年間保険診療収入と年間自由診療収入の合計が7,000万円以下である
という条件を充たしていないと適用されません。
医療法人の場合、経費が高いです。院長先生や理事の先生方の報酬を払うことになるので、医療法人の経費は高くなりやすいです。
そのため、概算経費よりも実際の経費が高くなり、概算経費でお得というケースはほとんどありません。
個人クリニックの場合、院長先生の報酬は経費じゃないありません。
そのため、経費が医療法人に比べて非常に小さくなります。
院長先生が所有する土地建物を医療法人に賃貸している場合には、賃料も医療法人の経費になります。
個人成りをしますと、賃料が発生しない→経費が小さくなります。
- 年間保険診療報酬が5,000万円以下
- 年間保険診療収入と年間自由診療収入の合計が7,000万円以下
- クリニックの土地建物が院長先生の所有
- 従業員も少なくなってきて払う給与が少なくなってきた
このような医療法人様は、個人成りをすることで大きなメリットを得られます。
節税効果がある
医療法人を個人成り解散することで、消費税、法人住民税、青色申告特別控除などの節税効果が望めます。
消費税
保険診療には消費税は課されませんが、自費診療には消費税が課される場合があります。
消費税が課されるのは、課税対象の売り上げが年間1、000万円を上回った場合です。
個人クリニックの場合ですと、自費診療の売り上げが1、000万円を超えている院長先生が消費税の納税義務者となります。ここでポイントなのは、その消費税が課されるのは翌々年であるということです。
つまり、自費診療の売上が1、000万円を超えた「2年後」から消費税が課されることになるということです。
個人クリニックとして事業を開始してから2年間は、前々年の売り上げはもちろん、前年の売り上げというものも存在しないので、課税対象となる売り上げがない以上、消費税が課されない、免税されることになります。
個人になってから1年目以降の売り上げが1、000万円を上回りますと、その売り上げに対して消費税が課されることになりますが、それが課税されるのは3年目以降のお話です。
結果として、個人クリニックとしての1年目および2年目は、消費税を納める必要がないということになります。
法人住民税
法人住民税とは、法人が納める住民税です。
個人の住民税と同じように、都道府県民税と市区町村民税があります。
これを、医療法人も収めなければなりません。
しかも、法人住民税には、法人の売り上げの大小にかかわらず、法人が存在しているというだけで課されてしまう「均等割」とよばれる定額部分があります。
均等割は、資本金と従業員数に応じて異なります。
一例ですが、東京都民税の場合ですと、一番低額な均等割として、資本金1、000万円以下で従業員が50人以下の場合に、7万円の均等割が課されます。
つまり、均等割の負担がなくなることで、最低でも7万円の節約効果が見込まれることになります。
青色申告特別控除
一部の青色申告のメリットは、医療法人においても、個人クリニックの場合と同様に享受することができます。
しかし、医療法人の場合には、青色申告特別控除が利用できません。
青色申告特別控除とは、課税対象となる所得金額を減額する制度です。
これを、個人クリニックになることで利用することができます。
それによって、最大で所得金額を65万円減額することができます。
結果として、所得税を節税することができるのです。
身軽になる
閉業や移転の場面
医療法人の場合には、監事など役員さんの印鑑が必要です。
個人クリニックであれば、経営者である先生1人ですべて自由に意思決定できます。
個人クリニックに個人成りした後は、クリニックの移転等、機動性が高く、ひとりで身軽に経営ができるようになります。
また、医療法人の場合、医療法人の運営に必要な手続・届出を役所に毎年しなければいけないです。
さらに、医療法人の場合、登記を申請したりする必要があるので、閉業に手間と時間が掛かってしまいます。
これに対して、個人クリニックの場合は、届出書類を出すことで足りるので、身軽にクリニックを閉業することができます。
そのため、個人成り→閉業・引退の場合、手間が格段に少なくなります。
他の事業を展開できる
医療法人は附帯業務について、法律で業務範囲が制限されています。
給食サービスなどは別のMS法人等を設立しそこでの運営となります。
また、医療法人には、非営利の原則、医療に関係のない業務はできないという医療法上の業務制限があります。
長年クリニック診療を頑張って続けていますと、趣味を事業化したり、他の事業にも興味が出てくることもあるでしょう。
飲食店や、サプリメントの通販などの物販も同時に事業展開してみたいという要望を持つ方もおられます。
個人クリニックに戻すことで、法人の場合よりも簡単に医療以外の事業が始められるようになります。医療法人よりも個人の事業の方がより自己実現しやすいのです。
- 新しい事業に興味があり、事業化してみたい
- 身軽にクリニックの経営を続けていきたい
- 自身でのクリニックの閉業を考えている
このような医療法人様には、個人成り解散をおすすめします。
お金の自由度が高くなる
医療法人の場合、医師個人は原則として役員報酬を受け取り、院長先生個人のお金と、医療法人のお金とが明確に分けられます。
医療法人のお金を院長先生が私的に使ってしまうと、「役員貸付金」ということになります。
つまり、法人からお金を院長が借りて、私的に流用しているという処理になります。
銀行から、この医療法人は資金の管理がきちんとできていない、と評価されることもあり、融資を受けることが厳しくなったりしてしまいます。
貸付金なので、利息を計上することになります。
そのため、利息である収益に対し、法人税の負担が増えることになります。
個人クリニックになると、個人事業主ですから、どちらも院長先生個人のお金であることには変わりがありません。
そのため、経営者自身のお金を経営者自身が使っただけですから、貸し借りという問題は発生しません。事業で貸しているわけでもありませんし、返済してもらう必要もありません。利息も発生しません。
その結果として、自由に診療財産を使えるようになり、事業資金の出し入れの自由度が非常に高くなります。
小規模共済が使える
医療法人の場合、個人加入の小規模共済は原則脱退し、生命保険を活用した節税及び退職金準備・リスク回避ができます。
個人クリニックにすることで、小規模共済が使えるようになります。
他にも、、、
決算処理、確定申告の手間や税理士コストの軽減が考えられます。
決算申告書を作成するのが院長先生だけでは難しいので、顧問の会計事務所を選び、依頼する場合がほとんどです。
そうすると、顧問料を払うことになってしまいます。
最近では、オンラインのものだったり、会計ソフトもあるし、記帳をご自身で行うことができます。
そうすれば、顧問料よりも、低額なコストで決算をできるので、その報酬等を節約することができます。
解散のメリット
① 医療法人で売上が多い時は節税効果があるが、売上が減ってきた場合には、法人の場合、従業員の社会保険(約13%)や年金がすごく負担になってくる。
⇒ 解散によって社会保険の脱退の脱退ができるようになる。
② 法人であれば、役所に医療法人手続き上の届出を毎年しなければいけない。
⇒ 解散によって毎年の届出が不要となる。
③ 概算経費の特例が使用しやすくなる。
概算経費→売上げに対して領収書が無くても一定の経費を認めてもらえる特例
※ざっくり年間売り上げが5000万未満であればメリットとして使える。
⇒売上が減ってきた場合、概算経費の特例が使用できるようになる。
解散をネガティブなイメージではなく、維持コストを大きく圧縮してお金を残すために、法人から個人に戦略的に戻すというのもアリ。